今年12月公開予定の
『武士の家計簿』をご存知でしょうか?
先日、「家計簿」つながりということで、松竹さんから試写会にご招待いただきました。
この映画は、ご存知磯田道史氏の同名著書の映画化です。歴史書の中では異例のヒット作なのではないでしょうか。お恥ずかしながらまだ読んでいなかったので、映画を拝見する前に読んでみました。これがまた、めちゃめちゃおもしろい!!
歴史はもともと好きなのですが、どちらかというと日本史は苦手で、世界史の方が好きでした。でも、この本のおかげで日本史への興味がグッと沸いてきました。
この本では江戸末期から明治にかけてのある家計の家計簿の史料をもとに、その頃の武士の生活ぶりなどを詳細に綴っています。その家計簿がかなり細かく記帳されていること、かつ4代に渡っての長期な記録であることから、史料としてもかなり記帳、じゃない貴重なのだそうです。
細かく記帳されている理由は実は単純明快で、記帳主が当時の「御算用者」といって、いわば藩の経理担当者だったとのこと。納得ですね。代々御算用者だった猪山家の家計簿は、こうして貴重な史料となりえたのです。
当時の武士家計は、いまよりも比べ物にならないくらい世間体や義理、見栄が大事で、出世するほど出費がかさみ、破綻する武士家計は多かったそうです。
本の主役である猪山家もその危機に瀕するのですが、そこは大胆な「家計見直し計画」を実行することで乗り切ろうと奮闘します。
当時、お金の貸し借りもかなり日常的に行われていた様子がよく分かります。金利水準は非常に高くて驚きました。また、米をお金に換える為替についても触れられており、18世紀世界で初めて先物市場が大阪で始まったのも、腑に落ちました(本の舞台は大阪ではありませんが)。
この本を映画化するとなると、どうなるのだろう?最初は率直にそう思いました。
そこはやはり目のツケ処が違いますね。大胆な家計見直しプロジェクトを中心とした人間の心情を中心に興味深く描かれています。
FP的に考えるに(笑)、この大掛かりな家計の見直しから、現代の見直しとの相違点が見えてきました。
共通する点は、まず見栄は家計をダメにする点。そして、傾いた家計を立て直すには、家族の協力が必要で、かつ心理的苦労が大きい点です。これまでと同じ生活ができなくなるわけですから、ストレスフルといったらありません。映画では松坂慶子さんが上手に演じています。思わず、もらい泣きしていましました。多分、泣く場面ではないと思います(笑)。
現代と異なる点は、「家計」が世代を超えて管理されている点です。そもそも収入が世代間合算して管理されていましたので、自然とそうなるのでしょう。そうなれば、当然に家計の見直しも世代間で協力しなければなりません。現代では夫婦間で話し合う程度かもしれませんね。ですが、この時代では子どもはもちろん、祖父母も加わります。これと比較すると、現代の核家族化の浸透や家族の絆の希薄化なども感じました。
家計の見直しはシンドイものかもしれません。それを乗り越えるのに時に家族間に軋轢も生じます。そうした感情の変化はうまく俳優陣が演じており、つい見入ってしまいました。本では人間模様には触れられていませんが、これぞ「映画化」という感じがしました。
時代が変わっても「家計見直し」の本質には変わらないものがあるのですね。それがよく分かる作品です。
公開までにはまだ時間がありますので、本と映画両方で楽しんでみてはいかがでしょうか。「家計を見直さなきゃ」と思っていらっしゃれば、この映画は家族間の協力や感情面のコントロールについてとても参考になる一作だと思います。とてもおもしろかったです。(^^)
ちなみに、著者の磯田さんは朝日新聞beで連載されており、連載陣のパーティでお会いしたことがあります(見掛けた、という方が正確かな・・・)。そのときに執筆者一人ひとりが挨拶をしたのですが、磯田さんのご挨拶はとてもおもしろく、会場は爆笑の渦に!プライベートなお話なので披露できませんが、お人柄もとても素敵な方だと思います!
家計の見直し相談センター